1990年代から、人工毛植毛に代わって自毛植毛手術の技術が進み、これを受ける患者さんが増えてきました。自毛植毛とは、脱毛しにくい後頭部や側頭部の皮膚を利用する移植法ですが、大きく分けると以下のような3つの方法があります。
●皮弁法(フラップ法)
側頭部と後頭部の皮膚を4センチ×25センチ程度の長方形に切り、皮膚と毛髪を大量に移植させる方法です。長方形に切る際、短辺の片側だけはつなげたままにして、細長い頭皮をよじるようして脱毛箇所に移動させます。移植する部分を全部切り取らず、1辺をつなげたままにしておくのは、動静脈ごと移植して血液の流れを保つためです。70年代に開発された皮弁法は、90年代半ばまで改良を重ねながら行なわれていましたが、現在はほとんど行なわれていません。動脈や静脈をつなげたまま移植するとはいえ、移植する皮膚が大きいため、血液や酸素の供給不足で壊死する危険性があります。手術を担当する医師側から見ても、大掛かりな手術で技術の習得もむずかしいため、しだいに行なわれなくなったのです。
●縮小術(スカルプリダクション)
縮小術という名の通り、脱毛してしまった部分の皮膚を切り取った後、その周辺の皮膚を引っ張って縫い合わせることで、脱毛部分の面積を減らす方法です。先の皮弁法が一度で済むのに対し、一般に縮小術は何度かくり返し行なわれます。ただしこの方法も、カバーできる面積が限られることや縫合箇所の傷跡が目立ってくるなどの問題点があり、皮弁法同様、近年はあまり行なわれなくなっています。
●遊離移植法
後頭部や側頭部の毛の残っている皮膚を抜け毛が目立つ場所に移植する方法を総称して、遊離移植法と呼びます。初期のパンチグラフト法では後頭部や側頭部から文字通りパンチで穴を開けるようにグラフト(移植片)を円形で採取し、そのまま移植していました。しかし、初期の方法では仕上がりが不自然になるため、いまはグラフトのサイズが格段に小さくなっています。