フィナステリド(プロペシア)は男性型脱毛症の治療薬なので、服用者が大人の男性に限られるのは当たり前、と思われたかもしれません。しかし、男性型脱毛症を発症するのは、男性だけではないのです。
フィナステリド(プロペシア)は、女性の脱毛症治療には使われていません。とりわけ妊娠中の女性や妊娠しているかもしれない女性、乳児に母乳を与えている女性にフィナステリドを処方することはタブーとなっています。
成人男性のフィナステリド(プロペシア)服用に関しては、1ミリグラム錠をつづけて飲んでいると、前立腺がほんのわずか小さくなることが確認されました。これによって前立腺の機能に問題が起きることはありませんが、前立腺がんの腫瘍マーカー検査をした場合、値が正常値の半分程度になってしまいます。したがって、前立腺がんの腫瘍マーカー検査を受ける際は、フィナステリドを服用中であることをあらかじめ医師に伝える必要があります。
また献血をする場合にも注意が必要です。フィナステリド(プロペシア)を服用中の方は、1カ月間飲むのをやめてから献血してください。これは妊娠の可能性がある女性にフィナステリド(プロペシア)を含む血液が輸血されるのを防ぐためです。
もうひとつ、フィナステリド(プロペシア)とドーピングの関係にも触れておきましょう。フィナステリド(プロペシア)は以前、世界反ドーピング機関が定める「禁止薬物リスト」に登録されていました。
2007年の7月13日、ソフトバンク球団に所属していたガトームソン選手の尿からフィナステリド(プロペシア)が検出され、ドーピング違反で20日間の試合出場停止処分を受けました。海外でも、サッカー選手やウインタースポーツのスケルトンの選手がフィナステリド(プロペシア)服用でドーピング違反となった例が報告されています。
フィナステリド(プロペシア)がドーピングの禁止薬物と知って、不安になった方もいるかもしれません。しかし、フィナステリド(プロペシア)が直接肉体機能に作用するわけではないのです。これを飲むことで、筋肉増強や持久力アップなどにつながることもありません。
フィナステリド(プロペシア)を服用すると、筋肉を増強させる薬物などを使用した形跡を消す効果が生じます。つまり、フィナステリド(プロペシア)が禁止薬物にリストアップされていたのは、単に違法な筋肉増強剤を使った痕跡を消す働きがあるからなのです。最近になって検査法が改良され、禁止薬物リストから外されましたので、男性型脱毛症のアスリートはホッとしているかもしれません。
ここまで説明したように、フィナステリド(プロペシア)には重い副作用もなく、20歳以上の男性が服用する場合は、特別な注意も必要ないことがお分かりいただけたと思います。ほかの薬との飲み合わせで副作用が強くなったり、効き目が薄れることもないので、医師にとっては処方しやすい薬です。
どんな薬にも、多かれ少なかれ副作用はつきものです。フィナステリド(プロペシア)の場合、臨床試験における副作用はごく軽いものでした。薬を飲んだことと関連がありそうな副作用は、フィナステリド(プロペシア)0.2ミリグラム錠を投与されたグループで1.5パーセント、1ミリグラム錠のグループでは6.5パーセント、プラセボを投与されたグループでは2.2パーセントの患者さんから訴えがありました。
どちらのグループも、訴えは男性機能の低下や性欲の減退など「性」に関するものが大半でしたが、いずれも「自覚症状」で、日常生活に大きな障害をきたすものではありませんでした。そもそもフィナステリド(プロペシア)には性欲に関与するテストステロンを減らす作用はないので、理論的にも男性機能に支障をきたすことはないと言えるでしょう。
欧米の臨床試験でも、性機能に関連した副作用の訴えが4~5パーセント報告されていますが、これも自覚症状であり、1ミリグラム錠グループとプラセボグループとのあいだにも決定的な差はなかったと報告されています。
また、国内の臨床試験でフィナステリド(プロペシア)1ミリグラム錠を飲んでいたグループから肝機能の悪化で上昇するALT値と総コレステロール値がわずかに上がった例、海外では胃の不快感を訴えた例がありましたが、いずれも軽い副作用でした。フィナステリド(プロペシア)の臨床試験では、深刻な副作用は国内外ともまったく報告されませんでした。
ただし、服用に当たっての注意点はいくつかあります。フィナステリド(プロペシア)は、医師の処方箋がなければ購入できません。こうした薬を「医師処方薬」と言いますが、フィナステリド(プロペシア)のようにホルモンにかかわる薬局の場合、薬局で自由に買える一般医薬品としての認可は下りにくいのが現状です。
このため、フィナステリド(プロペシア)を試したい方は、まず「脱毛症外来」のある病院やクリニックの診察を受けなければなりません。そこで男性型脱毛症と診断された場合、20歳以上の男性であれば特別な検査なしでフィナステリド(プロペシア)を処方してもらうことが可能です。ただしQOL改善薬としての位置づけですので健康保険の適応にはならず、診察、薬剤費ともに全額自費の診療になります。
また市販後の調査では国内で数十万人が内服していると推測されますが、十数例に重篤な肝機能障害が報告されています。数十万人の服用者に対し、副作用の報告例が十数例であった場合、普通の医療品なら特別な注意喚起はなされません。しかしQOL改善薬であるフィナステリド(プロペシア)には一応注意喚起の必要性があります。
フィナステリド(プロペシア)で重い副作用がでた十数名に共通した特徴は見られません。強いて注意点を言えば、もともと肝機能障害をもっている人は、服用の際十分気をつけたほうがいいということぐらいでしょうか。